「歯に良い食べ物」は本当?噂の食品を調べてみました
「カルシウムを摂ると歯が丈夫になる」
「チーズはむし歯予防にいい」
「キシリトールは歯にいい」
「緑茶はむし歯予防になるらしい」
このような話を、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
毎日の食事は健康な体をつくるために欠かせません。そしてもちろん、歯も毎日食べ物に触れています。
では、実際に「歯に良い」と言われている食べ物には、どのくらい根拠があるのでしょうか?
今回は、歯科に関する研究をいくつか調べながら、よく聞く食品について「本当?それとも少し言い過ぎ?」という視点で見ていきたいと思います。
① チーズは歯に良い? → 「期待できそう」
まず気になるのがチーズです。
チーズにはカルシウムやリンなどのミネラルが含まれているほか、噛むことで唾液の分泌が促されます。
過去の研究では、チーズを食べることで唾液の分泌が増え、口の中の酸を中和する働きや、歯の表面の脱灰を抑える可能性などが検討されています。
チーズとむし歯についてまとめたレビューでも、チーズにはむし歯を抑える可能性があり、その理由として唾液分泌の増加、カルシウムやリン、乳たんぱく質などが考えられています。
ただし、
「チーズを食べればむし歯にならない」
という意味ではありません。
あくまでも、食生活の中で比較的「歯にやさしい食品」の一つとして考えるのがよさそうです。
特に砂糖を多く含むチーズ味のお菓子などは、話が別です。
参考:PubMed「The effect of cheese on dental caries」
② 牛乳は歯を丈夫にする? → 「むし歯との関係では良い可能性」
牛乳も「歯に良い食品」としてよく挙げられます。
牛乳にはカルシウムやリン、たんぱく質などが含まれています。
牛乳とむし歯についてまとめたレビューでは、牛乳はむし歯を起こしにくい食品と考えられており、むし歯に対して保護的に働く可能性も示されています。
一方で、牛乳そのものが「歯を再生させる食品」というわけではありません。
また、砂糖を加えた乳飲料や甘いヨーグルト飲料などは注意が必要です。
同じ「乳製品」でも、砂糖が加わることでむし歯のリスクは変わってきます。レビューでも、牛乳にショ糖を加えるとむし歯リスクが高くなる可能性が指摘されています。
つまり、
「牛乳=歯に良い」ではなく、「砂糖の少ない牛乳は、むし歯の観点からは比較的好ましい」
くらいに考えるのがよさそうです。
参考:PubMed「Milk, Yoghurts and Dental Caries」
③ ヨーグルトは歯に良い? → 「種類によって考えたい」
ヨーグルトも健康食品として人気があります。
実際、ヨーグルトとむし歯の関係を調べた研究では、ヨーグルトをよく食べる子どもほど、むし歯が少なかったという報告があります。
また、乳製品に含まれるプロバイオティクスについても研究が行われており、口の中の細菌や唾液のpHなどに変化が見られた研究があります。
ただし、ここでも重要なのが、
「どんなヨーグルトでも歯に良い」というわけではない
ということ。
砂糖をたっぷり含んだヨーグルトを何度も間食として食べていれば、むし歯予防という点では逆効果になる可能性があります。
選ぶなら、糖分の少ないプレーンヨーグルトなども候補になります。
参考:PubMed「Milk, Yoghurts and Dental Caries」
④ キシリトールは本当に歯に良い? → 「研究はあるが、万能ではない」
「キシリトール=歯に良い」
これはかなり有名ですね。
キシリトールは砂糖とは異なる糖アルコールで、むし歯の原因となる細菌との関係について多くの研究があります。
過去のシステマティックレビューでは、キシリトールを使用したグループでむし歯指標が低下したという結果も報告されています。
一方、研究結果を詳しく見ると、すべてが一致しているわけではありません。
2024年に発表されたシステマティックレビューでは、9つの臨床試験を検討した結果、キシリトールによるむし歯予防効果を明確に確認することはできず、さらなる研究が必要とされています。
つまり、
「キシリトールは歯に良い」という話には研究上の根拠がありますが、「キシリトールを摂ればむし歯を防げる」とまで言い切るのは難しい
というのが、現在の研究を調べてみて分かるところです。
キシリトール入りのガムを利用する場合も、歯磨きやフッ化物の利用の代わりにするものではありません。
参考:PubMed「Xylitol in preventing dental caries」
PubMed「Is xylitol effective in the prevention of dental caries?」
⑤ 緑茶は歯に良い? → 「面白い研究はあるが、これだけで予防とは言えない」
日本人にとって身近な飲み物といえば、緑茶です。
緑茶にはポリフェノールなどの成分が含まれており、口の中の細菌や歯周病との関係についても研究されています。
緑茶と歯周病・むし歯について18の研究をまとめたシステマティックレビュー・メタ解析では、歯肉の炎症や歯周ポケットなどに良い方向の結果が報告されています。
ただし、その研究でも、
「緑茶を歯周病やむし歯の治療・予防の第一選択として推奨できるほどの証拠は不足している」
とされています。
つまり、
「緑茶を飲めば歯が健康になる!」
というより、
「緑茶には口腔環境に関連する興味深い研究がある」
くらいに捉えるのがよさそうです。
そしてもちろん、砂糖をたっぷり入れれば話は変わります。
参考:PubMed「Impact of Green Tea on periodontitis and caries」
⑥ 「硬いものを食べると歯が強くなる」は本当?
これも昔から聞く話です。
「歯を丈夫にするために、硬いものをしっかり噛みましょう」
という考え方ですね。
確かに、噛むことによって唾液が出るというメリットがあります。
しかし、
「硬いものを噛めば噛むほど歯が丈夫になる」
と単純に考えるのはおすすめできません。
特に、歯ぎしりや食いしばりがある方の場合、強い力をかけ続けることが歯の摩耗や破折などにつながることがあります。
大切なのは、「硬ければ硬いほど良い」ということではなく、
無理なくしっかり噛める食事をすること。
そして、噛むための歯を健康に保つことです。
結局、一番「歯に良い食べ方」は?
ここまで調べてみると、意外なことが見えてきます。
「この食品を食べれば歯が丈夫になる!」
という魔法のような食品は、どうやらありません。
それよりも重要なのが、砂糖を含む食品や飲み物をどのように摂るかということです。
WHOは、食品や飲料に含まれる「遊離糖(free sugars)」をむし歯の主要なリスク因子として挙げています。遊離糖を総エネルギー摂取量の10%未満、できれば5%未満にすることが、むし歯のリスク低下につながるとしています。
また、砂糖を含む食品を「どれだけ食べたか」だけでなく、食べる回数や頻度も重要です。
2026年に発表された小児・青少年を対象としたシステマティックレビューでは、砂糖の摂取頻度とむし歯との関連が検討され、総量だけでなく摂取頻度が重要な要素である可能性が示されています。
例えば、
「甘いものを一度に食べる」
のと、
「少しずつ何度も食べ続ける」
のでは、口の中が砂糖にさらされる状況が変わります。
そのため、歯の健康を考えるなら、
何を食べるかだけでなく、いつ、どのくらいの頻度で食べるか
にも注目してみるとよいでしょう。
参考:WHO「Sugars and dental caries」
「歯に良い食品」よりも大切なこと
今回いろいろな食品について調べてみましたが、最終的に感じたのは、
「歯に良いものを食べる」こと以上に、「むし歯になりやすい環境を作らない」ことが大切なのではないか
ということです。
チーズや牛乳、ヨーグルトなどには、歯にとって好ましい可能性を示す研究があります。
キシリトールや緑茶についても興味深い研究があります。
しかし、これらを食べたり飲んだりするだけで、むし歯を防げるわけではありません。
毎日の歯みがき、フッ化物の利用、間食の摂り方、定期的な歯科検診。
こうした基本的な習慣があってこそ、食生活によるメリットも活かせるのだと思います。
そして何より、
「歯に良い食品を探す」だけでなく、「今ある自分の歯を守る」
という視点を持つことが大切です。
「この食べ物、歯に良いって聞いたけど本当かな?」
そんな疑問をきっかけに、普段の食生活を少し見直してみるのもよいかもしれません。
毎日の小さな選択が、10年後、20年後の「自分の歯で食べる楽しみ」につながっていくかもしれません。